黒字でもリストラされる恐怖!中高年が考えておくべきセカンドキャリア

昨年は、有効求人倍率がバブル時代以上に跳ね上がり、私たち中高年に白羽の矢が立ちましたが、その一方で超大手企業が次々行ったリストラには驚かされました。

2008年のリーマンショックの時には30名以上の仲間たちがリストラに会い、その数年後に同じように私もリストラされてしまいましたが、売上が激変し利益が確保できなくなったから「仕方ない」と思わざるを得ない状況でした。

しかし、今ちまたで行われているリストラは少し方向性が変わってきているようですね。

食品メーカーの味の素が1月6日から開始した希望退職者の募集など、経営危機はない企業で相次ぐ希望退職の実施が話題になっています。

50歳以上の約800名の管理職を対象に、約100名の希望退職者を募集。特別加算金を上乗せした退職金を支給し、再就職も支援するとのことです。

希望退職者を募集する理由は「事業環境の激しい変化のなかを勝ち抜いていくため、黒字である今だからこそ構造改革を進めていく必要がある」と広報発表されています。

確かにアジアで流行するASF(アフリカ豚コレラ)の影響で飼料に混ぜるアミノ酸などを販売する事業が打撃を受け、今期の業績予想を下方修正しています。

経営危機ではないのに…?の声

ただ、人員削減するほど経営は厳しい状況なの?と、驚きや疑問の声を耳にします。

それもそのはず、これまで日本の大企業が希望退職者を募るのは、周囲も社員も認識できるくらいに会社が危機的な状況に陥った場合がほとんどだったからです。

味の素の2020年3月期の売上高は1兆1385億円、事業利益は880億円、純利益は180億円となる見通し。

今回の希望退職は業績が(まだ)堅調なうちの決断と言えます。それだけ日本企業に変革意識が高まってきていると認識すべき出来事かもしれません。

今後、こうした傾向は広がる可能性もあります。会社勤めをしている方は、自らの働き方を見つめ直す機会にするべきかもしれません。では、どのように見直すべきか?  考えていきたいと思います。

2000年以降に増えた希望退職者の募集。これまで、景気の低迷とリンクして増加傾向をみせてきました。業績不振で特定事業から撤退、そのぶん余剰人員が出るため希望退職を募る……というケースが一般的でした。

東京商工リサーチがまとめた、希望退職者を募集した企業数のグラフを見ると、2002年と2009年に大きなピークができています。

2002年は計200社が希望退職を実施し、総募集人数は3万9732人。2009年の実施企業数は191社で、総募集人数は2万2950人。

これらのピークには、明らかな環境要因がありました。2002年はITバブルが崩壊、小泉政権下で進められた銀行の不良債権処理の影響。2009年は前年に起きたリーマンショックの影響で業績が大幅に落ち込んだ企業が急増しました。人員削減がまさに景気低迷にリンクしていたのです。

ところが、現在は景気低迷までに至らない状況ながら、希望退職が急増しつつあります。

過去にあった大きな2つのピークまでには至っていませんが、2019年1~11月の上場企業の早期・希望退職者の募集(または応募)が、1万人を突破。年間で1万人を超えたのは6年ぶりで、2018年1~12月(12社、4126人)の約3倍の人数に上るとのこと。その増加の一因が、味の素のような「戦略的な」希望退職のようです。

味の素のように短期的な業績からみれば、希望退職が急ぎで必要とは思えない会社が何社も並びます。さらに2020年以降も希望退職を募る方針を明らかにしている企業が何社もある様子。この動きが大きなうねりになっていく予感がします。

再就職支援に手厚い企業が増えている

このように、今回の希望退職の増加は、過去のピーク時とは明らかに違う動きとも言えますが、実際に希望退職に手を挙げた場合、その後のプロセスに変化はあるのでしょうか?

これまでは、退職金の積み増しなど「このタイミングに辞める特典」を得て、次の職探しへ向けて、セカンドキャリアの支援プログラムに参加するケースが多く見られました。

今回の場合、退職金の積み増し額に大きな変化はないようですが、後者のセカンドキャリア支援に対する時間と手間をかける会社が増えている傾向がみられます。

具体的には、再就職支援会社を活用して能力開発やカウンセリングをするだけではなく、転職支援によって次の職がみつかる人が増えたようです。

ある大手の再就職支援会社では、転職活動を始めて半年以内で7割以上の人が再就職しているとのこと。

再就職を実現するための企業努力も進んでいるようです。例えば、自社独自で求人開拓部隊をつくり、求人情報が公開されていない企業に対して、シニア人材の受け入れを直接提案。新たな再就職機会の創出に力を入れるようになってきました。

さらに全国で公開されている求人をまとめて探せるシステムを開発。

シニア人材を受け入れる求人を見逃さないようにするという活動の徹底ぶり。こうした企業努力を各社が行い、再就職の実現率向上、満足度の高い再就職が増加しているようです。

最大手であるリクルートグループによると、キャリアカウンセラーと求人開拓スタッフの連携で3カ月で59%、6カ月で78%の方が、納得度の高い再就職を実現しているとのこと。

また、そもそも40~50代のシニア人材の求人が増えたという、環境の変化も一因となっているようです。

エン・ジャパンが転職コンサルタントに「これまでに50代以上を採用する求人を扱ったことがありますか?」と聞いたところ、95%が「ある」と回答。50代以上対象の求人増加を感じるか聞いたところ、79%が「増えている」と回答しました。

さらに求人が増えている企業タイプは「中小企業」(78%)が圧倒的。特定分野における専門性や豊富な経験を生かした即戦力として期待しているようです。このように、退職後の転職先探しにおいて、徐々に選択肢が増える状況になってきたといえます。

こうした状況も、企業が希望退職実施を決断できる要因の1つになっているのかもしれません。

投資家による株主提案も背景に

希望退職の募集が今後増えていくと考えられる理由はもう1つあります。それは株主利益の最大化を求める投資家が、希望退職を提案する事例が増えつつあるということです。

当社が関わったコンサルティング案件でも、アクティビストと呼ばれ、経営陣へ積極的に提言を行う集団から、大胆な早期退職を勧める株主提案を受けて苦慮する経営陣から相談を受けたことがありました。ときにこうした流れを“大義名分”として、会社が企業業績の好調なうちに、希望退職を検討する時代になりつつあります。

かつての日本企業では「企業は従業員のもの」という考えが強くありましたが、“株主優位”の流れが、希望退職の早期化を加速させているのかもしれません。
さて、こうした時代の変化を踏まえて、仮に会社が希望退職を始め、その対象に自分がなっていたとしたら……個人としてはいったいどうしたらいいでしょうか。

希望退職の対象になっても「会社にしがみつくべき」との意見をよく聞きます。ただ、本当にその選択しかないのか、新たな選択肢を探してみるのは無謀なことなのでしょうか。

人生100年時代、自分に新たなキャリア人生があるのであれば、どのような選択肢があるのか?確かめてみようとする人もたくさんいます。

現在の職場での仕事、これまでの職場での仕事を踏まえて、自分にはいったいどのような可能性があるのか。今の仕事と今後の可能性、両方を天秤にかける機会として活用してみたり、自己分析を行えるツールを活用して自分の棚卸しを行ってみるのです。

管理系の仕事が長かったにもかかわらずサービス業の現場に向いているとか、営業系の仕事に向いていると思っていたが業務分析の仕事が適職であるなど、自分も気がつかなかった可能性がみえてくることがあります。

例えば、筆者が人事コンサルティングの仕事で、経営幹部の該当職務が適職であるかを分析する場合。思考・行動特性に加えて、仕事への興味から適職度を測るのですが、周囲から見ると適職に見える人が実は違っていたという場面に遭遇することがあります。

本人にフィードバックすると、仕事的にはそれなりにこなせるが、ストレスを抱えていた、適職でないのに我慢して長く仕事をしていた……と、現在の仕事が適職でないと感じている、そのことを思い出したと回答してくれたりします。

これまでやってきた仕事の延長線というだけで、今後の選択肢を考えるのはもったいないと感じます。もっとストレスがない仕事があるかも、別の適職が見つかるかもと模索してみて、そのうえで会社にしがみつくという選択に戻ってもいい気がします。

違う職種への転職だとつらくなる?

ちなみに年齢が高くなるにつれ、転職するにあたって、職種を転換する度合いは大きくなっています。

コンサルティング中にお会いした再就職活動中のSさんは、事務職の経験しかなかったのですが、提示された職種は事務職以外の仕事ばかり。できない、無理、やりたくないとネガティブ思考になりかけましたが、生活のこともあり「あえて選ぶなら」と消極的に決めた職場に再就職。

ところが想定以上にやりがいを感じて、今では「この仕事こそ適職かも」と言い切るくらい。

Sさんに限ったことではなく、まったく異なる仕事に移ったシニアに、現在の業務への満足度を聞くと、不満と感じている人は想像ほど多くはありません。

できるかぎり条件を広げて適職を探し、再就職をしてみると「意外に居心地がいい」というケースが少なくないことを踏まえておくことは大事かもしれません。

70歳ぐらいまで働く時代になろうとしています。1つの会社でキャリア人生を貫くことに固執することなく、長く働くためにも、機会を広げる準備をして、有意義なキャリアを描いていきたいものです。

2020年1月15日(水)東洋経済ONLINE  高城幸司(株式会社セレブレイン社長)著より引用

リストラされて再就職したものの馴染めず、自営業者として生きる道を選びましたが、みなさんもセカンドキャリアを考えておくべき時期に来たのではないでしょうか?

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